行政の将来を考える会

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第38回例会「電子商取引が支える産業構造変革−自動車・物流・金融産業の新たな展開」
(講師:日本興業銀行ネットワーク業務推進部調査役 安藤秀則氏)
2000年2月2日、行政の将来を考える若手の会第38回例会が開かれました。今回の例会では、『電子商取引が支える産業構造変革−自動車・物流・金融産業の新たな展開』をテーマに、日本興業銀行ネットワーク業務推進部調査役の安藤秀則氏を講師としてお招きし、34名(講師を含む)が出席して意見交換を行ったところ、主要点は次の通りです。

1.興銀の「ネットワーク業務推進部」

(1)興銀の「ネットワーク業務推進部」は1年半前にできた新しい部である。従来、銀行のシステム部門は、地味な内向きの守りの仕事が中心であった。しかし、今はオープンネットワークを通じてどのように顧客にサービスを提供するかが課題となっていることから、独立した部門としてネットワーク業務推進部が創設された。
(2)部の構成は、純粋な銀行員としての経歴を持つ人(金融商品についての知識、企業顧客の知識、ビジネス・モデル等の分析力を持つ)が3分の1で、その他は銀行のシステム専門家、コンサルタント、系列のシステム会社等が占めており、きわめて幅広い混成チームで仕事をしている。
(3)この部で、自分は企業間電子商取引(Eコマース)用アプリケーション開発、企業向け電子サービス、企業向けキャッシュマネジメント・サービスを担当している。一般の消費者になじみのあるものは企業・消費者間Eコマースであるが、企業間ではそれよりはるかに大規模の取引が行われている。

2.インターネットの特性と産業への影響

(1)インターネットは、双方向性のあるオープンネットワークである。その中で、買い手(消費者)は、(イ)もはや無知な買い手ではなく、(ロ)交渉力と選択肢を持った買い手となり、(ハ)インターネットスピードで行動可能な買い手となっている。
(2)産業分野で電子商取引の世界を規定する事象としては、(イ)買い手主導、(ロ)エンド・トゥ・エンドの交渉・中間業者の希薄化、(ハ)リードタイムの短縮・取引スピードアップ、(ニ)情報結合による提携・分業、企業間エンタープライズ(自社のコアコンピタンスへの特化と他社へのアウトソーシング)等が挙げられる。
(3)企業間電子商取引が今後本格的に拡大して来ると、(イ)マス・プロダクションからマス・カスタマイゼーションへ、(ロ)社外への情報開示・共有(積極的な情報開示はむしろサービスバリューとなる)、への動きが顕著になって行くものと考えられ、この様な動きが更に(ハ)企業間電子商取引を推進させる事となる。

3.旧モデルから過渡期モデルへ(自動車製造・販売の例)

(1)旧来の自動車産業では、メーカーから販売会社を経て消費者に到達する経路をとっていた。その結果、(イ)マスとしての消費者嗜好や市場動向を予測した開発、(ロ)見込み生産をするため、(ハ)部品・製品・販売在庫リスクを自動車メーカー、販売会社が負って来た。
(2)近年、過渡期のEコマースモデルとして、独立系のブローカー(オートバイテルなど)が生まれ、消費者のために販売会社のビッティング(入札)代行を始めた。しかし、これは「ニューテクノロジー・オールドウェイ」である。つまり旧来のビジネスモデルを自動化・効率化しただけであり、ニューテクノロジーを使ってのアービトラージにすぎない。
(3)今後「ニューテクノロジー・ニューウェイ」を模索してモデルは更に進化して行くであろう。この様な過渡期の混沌とした状況においては、製品・商品の競争力もさる事ながら、ビジネスモデルの競争力が企業の盛衰を大きく左右する傾向が顕著になってこよう。

4.来るべき新しいモデルを考える上で消化すべき課題等(自動車製造・販売の例)

(1)自動車販売の「ニューウェイ」(新しいビジネスモデル)が具体的にどの様な物になるかを考える上で、自動車メーカー・販売会社が現在直面している以下の課題をきちんと消化しておく必要がある。
(イ)ますます選好対象となる悪循環から如何に脱するか。(メーカー、販社双方の課題)
(ロ)独立系インターネットブローカーからいかに主導権を奪回するか。(メーカーの課題)(GM/AOL、フォード/ヤフーの提携は、大手自動車メーカーによる主導権奪回のための反撃開始ののろし)
(ハ)レートショッピング機能を上回る付加価値提供の必要性。(メーカーの課題)
(ニ)個々の消費者ニーズの木目細かい把握に基づいたマス・カスタマイゼーション。(メーカーの課題)(サプライチェーンからディマンドチェーンへ)
(ホ)販売能力重視からサービス能力重視へ。(販社の課題)
(2)新しいビジネスモデルを考える上でもう一つ認識しておくべきは、インターネットでは Richness と Reachを相当程度両立できるという点である。すなわち 「顧客毎の個別ニーズへの対応の濃淡」と、「取引可能な顧客数の多少」は、従来トレードオフ関係にあったが、これがインターネットというチャネルを使う事により「顧客毎の個別ニーズへの対応を濃く」しながら、「取引可能な顧客数も相当多い」という事も実現可能になる。

5.新しいモデル、更に会社の事業形態の進化へ(自動車製造・販売の例)

(1) 究極のEコマースモデルは、消費者が自動車メーカーに直接アクセスし、自身の個別のカスタマイズ希望織り込んだ発注を行うものである。メーカー側はマスカスタマイゼーションを前提とした生産体制をとることとなる。具体的に生産・販売の現場では以下の様な展開を見るであろう。
(イ)消費者嗜好を広範に吸収可能なプラットホームとしての自動車開発
(ロ)プラットホームをベースにしたマス・カスタマイゼーション
(ハ)受注生産
(ニ)部品在庫大幅減少
(ホ)製品・販売在庫はゼロに
(ヘ)販社は販売機能よりサービス機能を重視
(2)また、この結果、自動車メーカー、販社、消費者の間に現状存在する以下の様な相互不信感も相当程度解消される。
(イ) 自動車メーカー→販社: 車が売れないのは販社の営業力が無いからだ。
(ロ) 販社→自動車メーカー: 車が売れないのはメーカーが売れる車をつくらないからだ。
(ハ) 販社→消費者: これだけいたれりつくせりのサービス・接客をしても消費者は車を買ってくれない。
(ニ) 消費者→販社: 販社は押し付けがましく信用できない。
(3)単なるビジネスモデルの変遷にとどまらず、インターネットは会社の事業形態まで大きく変えてしまう可能性がある。自動車メーカーでは一番先鋭的にインターネットの活用を進めているフォードを例に大胆に仮説を置いてみると以下の通り。
(イ)ポータル化(たとえば、「フォード」は既にフォード、ボルボ、リンカーン、マーキュリー、ジャガー、アストンマーチン、マツダという幅広いカテゴリーのブランドを持っており、自動車のポータル的様相を呈しているが、この傾向が一層顕著になる)
(ロ)設計デザイン会社化(マスカスタマイゼーションの世界では設計・デザインがますます重要になる)
(ハ)顧客データベース化(自動車製造自体が付加価値・収益の源泉では無く、各種顧客情報が最大のバリューの源泉となり得るかもしれない)
(ニ)製造のアウトソース化(製造自体のプロフィットマージンは低くなってしまうので車体メーカーに任せる)

6.自動車産業の企業間Eコマースの現状

(1)自動車メーカーの競争力アップの手法として、自動車メーカーによる部品メーカー選別、並びに部品メーカーの階層化(一次・二次・三次部品メーカー等)が進んで来た。
(2)しかしながら部品メーカーの階層化による弊害も出て来ている。例えば、自動車メーカーが1次部品メーカーに伝えた生産計画が2次、3次部品メーカーでそれぞれ消化され、階層の末端まで流れて行くまでの間に(イ)情報伝達のタイムラグが生じる事はもとより、(ロ)各階層で安全を見た生産計画を下の階層に伝達する傾向にある等の理由からサプライチェーンに過剰な在庫負担を抱える等の問題が指摘されている。
(3)これに対して、階層を超えた情報共有化・同期化のためのモデルが自動車業界を中心に提唱され始めている。具体的には、JNX(日本自動車工業会等が推進する日本の自動車産業用エクストラネット)、ANX(北米の自動車産業用エクストラネット)、オートエクスチェンジ(フォード)、トレードエクスチェンジ(GM)等のネットワーク基盤またはマーケットサイトである。こういった共通の基盤・サイトにあらゆる階層の部品メーカーが接続する事により、実際の物理的階層にもかかわらず情報チェーンの上では水平且つ同期をとって、サプライチェーンの頂点に位置する自動車メーカーと結ばれる事になる。これにより、自動車メーカーから生産計画が伝達した段階で、すべての部品メーカーがバッファーやタイムラグ等なく対応できる。
(4)現在日本では、各自動車メーカーと各部品メーカーの間で、専用回線とアプリケーションが「タコ足状態」でつながれている。今後、JNXが実用化されて行くと、(イ)回線の集約化が進む。更に、(ロ)アプリケーションの共通化も実現していくと思われる。自動車メーカー各社は系列メーカーからの純正部品調達を減らし、非系列メーカーからの汎用・共用部品調達を増やしているが、この様な流れを一層加速させるためにも通信基盤とアプリケーションの共通化が必用と思われる。更に銀行、物流産業等を含む他業種ともエンドトゥエンド且つシームレスでの電子商取引が実現していくこととなろう。企業間電子商取引があたり前の様に行われるようになると、このような業種を超えた情報共有化・同期化により、各企業があたかも一企業の一部門であるかのように機能する「企業間エンタープライズ」モデルが出現すると思われる。

7.自動車製造・販売の歴史と生産管理手法の進化の概観(以上のまとめとして)

(1)自動車が発明された直後は工房生産的であり自動車は「高値の花」であった。
(2)それが20世紀はじめにフォードが初めてアセンブリーラインを使ったマスプロダクションを開始して以降、自動車の大衆化が始まった。またそれと同時にプロダクション・マネジメントの巧拙が自動車メーカーの競争力を左右する事となった。更にトヨタのカンバン方式に代表されるサプライチェーンマネジメントの手法による自動車生産コストの一層の低下も加わって、今や先進国では自動車は「持つのはあたり前」の時代になっている。
(3)自動車という商品は発明されてから今にいたるまで一貫して、単なる実用性と経済合理性だけでは割り切れない、「こだわり」「ロマン」「夢」を重要な構成要素としている。「こだわり」「ロマン」「夢」を満たせない自動車は消費者にとって魅力に欠ける。ところが皮肉な事に、自動車の大衆化が極端に進み、「持つのがあたり前」の時代においては、この重要な構成要素である「こだわり」「ロマン」「夢」が成り立ちにくくなっている。白のホンダアコードに乗っていて信号で止まったら、信号の向こうにもこちらにも同じ白のホンダアコードが3台も4台も止まっている事に満足する人は誰もいないであろう。自動車に関して、「人とは違ったものが欲しい」、という感情を今の時代ほど多くの人がもつようになった事は過去には無かった。
(4)「こだわり」「ロマン」「夢」といった消費者に対するアピールを自動車という商品が取り戻すためにも、インターネットを活用したマスカスタマイゼーションが有効なソリューションになって来る。そしてマスカスタマイゼーションにおける生産管理手法は従来のサプライチェーンマネジメントからディマンドチェーンマネジメントに軸足を移す事になる。
(5)また、インターネットを使う事により会社組織や企業系列の内外を問わず、相当密度の情報のやりとりが双方向で迅速且つ低コストで可能になって来ると、カンバン方式のスコープも拡大する。従来のカンバン方式は企業系列内での取組み限定されがちであったが、インターネットを活用した電子商取引により可能になるカンバン方式は、企業系列に関わらず幅広い国籍、業種の会社を広く取り込んだものに再定義されるものと考えられる。

8.興銀の「AutoTrans Project」

(1)次に、日本興業銀行の自動車産業用企業間電子商取引アプリケーション開発、AutoTrans Project を事例研究として紹介する。これまでに述べた様な文脈の中で事例研究を位置付けていただくと理解していただきやすいと思う。AutoTrans Projectは日本興業銀行を幹事に自動車メーカー、米国自動車部品メーカー、海運会社、商社、フォワーダー十数社の参加と協力を得て立ち上げた自動車部品取引用の商流・物流・金融アプリケーション開発プロジェクトである。そのフェーズ1(昨年)ではこの内商流・物流アプリケーションのプロトタイプを立ち上げた。尚この商流・物流アプリケーションを使って昨年10月から12月まで実証実験を行い、米国自動車部品メーカーから日本の自動車メーカー及び商社への自動車部品輸出取引(7発注、10船積)を実際にまわした。現在この実証実験の評価を行っている最中であるが、業務仕様に特段の問題も無く、アプリケーションのコア部分は完成したものと考えている。
(2)AutoTrans Projectの特徴は次の通りである。
(イ)「商流」、「物流」、「金流」を一体としてシームレスにカバーするアプリケーションの開発
(ロ)汎用・共用部品調達の増加に対応するための自動車産業用汎用業務アプリケーションの開発
(ハ)JNX(Japanese Automotive Network eXchange)用汎用業務アプリケーション開発の第一号(ただし、インターネット等JNX以外のインフラも利用する。ネットワーク・ニュートラルにする。)
(ニ)世界ではじめてのANX間国際接続用汎用アプリケーションの開発(ENX(欧州)、ANX(米国)等を相互に接続する。)
(3)時期的な段取りとしては、フェーズ1は発注、代金請求、物流を対象とし、今年の春からのフェーズ2はファイナンス、代金決済、運転資金供与、信用照会、与信リスク回避を考えている。なお、マーケットサイトや入札機能といったソリューションも今後の展開として検討しているが、この様な機能の開発は銀行のコアコンピテンスではないため既存の、または今後実用化されるソリューションとの提携を検討する事となろうか。
(4)「AutoTrans Project」の名前のもととなったキーワードは次の通りである。
(イ)「Auto」 自動車(Automobile)、自動化・電子化(Automatic)
(ロ)「Trans」 貿易(Transnational)、取引(Transaction)、船荷情報閲覧機能(Transparency)、EDI翻訳(Translation)
(5)フェーズ1では、貿易電子化及び船荷情報電子化に加え、今後金融アプリケーションを付加していくための土台構築を行おうとしている。このフェーズ1の実証実験を昨年9月から12月まで行った。参加企業は、日産、大手自動車メーカー2社、三菱倉庫、欧州系大手海運業者等である。
(6)このプロジェクトの成果は他産業への応用も可能であろう。確かに個別の産業ごとに特殊な要素があるが、自動車産業などのアセンブリー産業は特に精緻なものが要求されているので、今後他産業への応用は可能である。

9.質疑応答

(1)(質問)説明中に出てきた「BPR」とは何か。

(安藤氏)ビジネス・プロセス・リエンジニアリングである。業務や取引を電子化する際には従来のプロセスを単に電子化するだけでなく、プロセスの見直し、改革を行って行くのでなければ本物の成果は得られない。AutoTrans Project の商流、物流アプリケーション開発においてもBPRを行った。

(2)(質問)システム開発の費用分担はどのように行うのか。

(安藤氏)興銀が直接コストを負担した。従ってアプリケーションの版権は興銀が持つ。特許も申請した。

(3)(質問)消費者と製造業者との間で、電子媒体で商品を売買すると、在庫の削減につながる理由如何。また、経済全体で在庫が削減される理由如何。

(安藤氏)Eコマースが進むと、マス・プロダクションでなく受注生産することとなるので、見込み生産しなくてすむ分だけ、在庫が減ることとなる。なお、すべての取引がEコマース化するとは考えていない。インターネットはあくまでも一つのチャネルである。

(4)(質問)AutoTrans Projectに参加している各企業の反応はどのようなものか。本当に動き出すのか。

(安藤氏)昨年末までに実験を行い、現在評価を行っているところだが、好評である。商業ベースでの開始は金融アプリケーションを完成させてからという事となる。最近いろいろな動きがあり、たとえば取引相手選定、入札のソリューションを持つ会社等からもアプローチを受けたりしている。特にAutoTrans Project Phase1において開発した国際物流トラッキング用汎用ソリューションは、現状他に目ぼしいソリューションが見当たらない事から注目されている。

(5)(質問)物流関係が一番大きな問題のようだが、他方で国際物流のソリューションは進んでいない。どういう方向で誰がどうやって努力していったらいいのか。

(安藤氏)いままで社内限りになっていた情報を顧客に開示・共有する事により、手っ取り早く顧客サービスの質を上げる事ができるのは各産業の中でも物流業界がまず筆頭に挙げられる。既に起こっているが、今後物流業界では顧客サービスのための物流情報開示競争(特に開示手法の質とリアルタイム性をめぐって)がますます顕著になるのではないか。その様な中で国際物流のソリューションもしっかりしたものが生まれて来ると思われる。物流ソリューションに関して言えば、米国の某大手物流会社は顧客サービス用に使っている物流データベースを活用してトレードファイナンス専門の電子銀行立ち上げを検討している模様だ。物流情報を押さえれば、物流金融・貿易金融に必用なデータの相当部分がそろう。銀行業界にいる者としては、物流会社のこのような動きは怖いと思った。日本の物流業界は、一般的に古い体質であり、その状況に座していると、海外の情報武装した物流業者に顧客基盤を侵食されてしまう。

(6)(質問)ヤマト運輸は物流分野におけるEコマース化の隠れた本命と言われているがどうか。また、自動車会社は世界で5社程度に集約されていくと思うが、物流業界でもそのような統合は起こるのか。

(安藤氏)ヤマト運輸個別の状況についてはよくわからない。物流業界でも 1st Tearとして情報武装した総合物流サービスを展開する Third Party Logistics 形態の会社からその下請けに甘んじる 2nd Tear、3rd Tearの物流業者に階層化して来るのではないか。またその中で物流会社の集約化も起こってくると思う。

(参加者)ヤマト運輸は「企業間」ではなく「企業・消費者間」Eコマースであり若干分野は違うが、着払いのシステム等で進んでいる。

(参加者)マス・カスタマイゼーションにより、従来より小さいロットでモノが行き来すると、「企業間」も「企業・消費者社間」に近づく。その点が今後の課題と認識されていると思う。

(参加者)自動車業界では、日本系メーカー、米系メーカーでもそのような問題意識は少ないのではないか。小売情報は最も貴重である。システム開発には何十億円、何百億円がかかるが、車齢は10年程もあり、その間の顧客情報の集積は重要である。保険、部品等様々な商品の販売につながる。例えば、部品については、完成品用部品の利益率はほぼゼロ%だが、修理部品の利益率は100%となる。情報を誰がとるかで価格が決定される。自動車は価格決定権をメーカーが持っている。現在電機は消費者が価格決定権をもっている。価格決定権を維持するためには、メーカーが自ら消費者情報をいかにとるかが課題である。

(7)(質問)発注側メーカーと受注側部品メーカー、顧客とメーカーとの情報ネットワーク化、Eコマース化が進むと、中間層たる販社等と同様に銀行の役割も低下するのではないか。

(安藤氏)まさにその通りの懸念を持っている。米国ではEDI(エレクトリックデータエクスチェンジ)バンクという概念が生まれており、企業顧客は電子商取引の資金の(電子)決済をせいぜい数行の銀行(EDI Bank)に集約する傾向にある。従来、企業は数多くの銀行とバランスを考えて付き合うとの状況だったが、最近は決済取引においては特に銀行の集約化が進んでいる。今後ますます銀行も選好の対象になってきている。選好の対象になることに甘んじないために日本興業銀行はプロアクティブにAutoTrans Project 等のアプリケーション開発に取り組み、他との差別化、高付加価値化を狙っている。

(8)(質問)日本はこのような企業間商取引のネットワーク作りで他国に負けていないか。日本企業の活動を強化するために政府に期待する役割は何か。

(安藤)現在の興銀のプロジェクトはアプリケーション開発が中心であり、誰がネットワークの勝者になっても付加価値をつけられる。ネットワーク構築は通信会社等が手掛ける分野であり、銀行のコアコンピュタンス分野では到底無い。なお、規制緩和との関連では、AutoTrans Project 等で開発したソフトウェアを売りたいが、銀行法に書いていないので、原則ダメというのが日本の行政の考え方である。これからは銀行業界も益々アイディア(ソフト)が競争力の源泉となって行く訳で、ソフトウェアーを銀行自身が当然の事として売れる様になるべきだ。

(参加者)送信するデータ量が莫大になるので、政府は通信料の値下げをしてほしい。

(9)(質問)興銀がフェーズ2で金融アプリケーションをフェーズ2で作る際に、そのアプリケーションをベンチャー企業も使うことができるか。

(安藤氏)電子商取引への取組、推進においては何でも自前でやるのでは無く、提携等を活用しつつ自己のコアコンピュタンスに徹するという事も大切である。その意味で、外によいリソースがあればいっしょにやっていく姿勢である。

(10)(質問)セキュリティについて、ハッカー以外にも自然災害、火事等にもデータを守る必要がある。各企業が守るとコストがかかるので、データセンターにアウトソーシングして、そこがセキュリティーも提供するとの方法があり、米国でもこのようなデータセンターが流行ってきている。このような理解でよいか。

(安藤氏)自分も同じ認識である。今回の実験では興銀がデータベースを運用したが、これはコアコンピタンスではないので、実用化段階ではアウトソーシングしたい。

(11)(質問)電子商取引が進むとそれによって蓄積された顧客データベースがますます重要なアセットとなるが、万が一、データセンターに管理を委託した顧客データベースに、情報漏洩などを含む損害が生じた場合、誰がその責任をとるのか。また、Y2K問題の際、代替手段が準備されておらずリスクに対し脆弱なシステムが数多くあることが露呈した。電子商取引のシステムにおいて暗号は重要な要素となると思われるが、万が一、その暗号が破られた場合には、何らかの代替手段は想定されているのか。

(安藤氏)実用化するときは真剣に考える必要があろう。今後の検討課題の一つである。

(12)(質問)トレードファイナンスを自分の銀行で押さえるためこのプロジェクトを始めたのだと思うが、誰が始めようといったのか。この時点で見れば先見性があったとわかるが、最初のきっかけは何だったのか。アイディアから実現に向けて困難はなかったのか。

(安藤氏)AutoTrans Project はもともと私の前課長が長年温めていたアイディアをベースとしている。その後某自動車メーカー2社とEDIアプリケーション開発を実際に手掛ける事を前提に勉強会をやっている中でプロジェクトとして具体化して行った。伝統的な銀行業務とは180度違うので、行内折衝(予算の確保など)を行い、行内コンセンサスをとるのが1つの大きなヤマ場となった。

(13)(意見)通信料の値下げ、銀行の選別の話の関係で一言コメントしたい。国の外と内の概念が無意味になってきており、政府が人為的にやることが特定の産業の足を引っ張ることになりかねない。一企業にとって、競争相手が世界中に現れてくるので、税金、規制緩和などの枠組みが一層大切になると思う。

(参加者)グローバルなプレイングフィールド確保の必要性は切実に感じている。また、政府の効率化も大きな課題であり、電子政府といって出願の電子化、簡素化、アジアでの統一化等、新しい情報技術を使ってやっている。
Posted by gyosei-kanji
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